高齢者のインフルエンザ 症状 肺炎など合併症、症状が長引く等の受診目安
高齢者のインフルエンザ罹患率は高くありません。
しかし、インフルエンザ関連の死亡率は、
9割が高齢者だという現実があります。
インフルエンザになって、
・症状が長引いている方
・症状が激しい方
ご心配かと思います。
今回は、
1、インフルエンザの症状
2、インフルエンザ合併症の症状
3、受診するタイミング
について、まとめてみました。
成人のインフルエンザの症状
まずは、インフルエンザの基本的な症状についてみてみましょう。
ご自分の症状が正常範囲内なのかどうか確認してみましょう。
新型インフルエンザは、症状はA型に似て(元々A型が変異)いますが、
その時にしか詳しい症状などはわからなく、毎年の発生はありません。
今回は、A型とB型について述べます。
【A型】
特徴 一番感染力が高い
毎年大流行を起こす
高熱、喉の痛み、鼻づまりが酷くなる
呼吸器系の合併症を起こす危険性もある
ウイルスタイプが変異しやすい
→予防接種が効かない可能性がある
潜伏期 1~5日程度(大抵1~2日で発症)
症状 突然の発熱(38度から40度に近い)
ガタガタ震えながら上昇することが多い
★熱は3日程度で落ち着くことが多い
悪寒・さむけ(突然の発熱に伴い震えながら寒気があること)
関節痛・筋肉痛・腰痛
全身のだるさ
喉の痛み
咳・痰・鼻水
頭痛
★熱以外の症状は、発症から7日程度で回復
【B型】
特徴 A型に続いて感染性が高い
数年に一度流行を起こす(2月から5月頃が多い)
腹痛や下痢といった消化器系に影響が出やすい
一般的な風邪症状と似ている
A型よりも症状は軽い
ウィルスタイプが変異しにくい
→予防接種が効く可能性が高い
潜伏期 1~7日程度(大抵1~3日で発症)
症状 突然の発熱(37度から38度台が多い)
★高熱は3日程度で落ち着くが、その後微熱が続くこともある
悪寒・さむけ(突然の発熱に伴い震えながら寒気があること)
関節痛・筋肉痛・腰痛(高熱が出ることで起こる)
全身のだるさ
喉の痛み
咳・痰・鼻水
頭痛
胃痛・吐き気・嘔吐
腹痛・下痢
★発症してから7~10日程度で回復
A型インフルエンザでは、長くても10日
B型インフルエンザでは、長くても14日程度で症状はなくなります。
それ以上長引いている場合でも、症状が徐々に軽減していれば、
自宅療養でも問題ないと思います。
しかし、症状が変化なく長引いている方や、症状が激しい方は、
注意が必要です。
次項目以降もチェックしてみてください。
インフルエンザ合併症の種類と症状
ここでは、どのような人が重症化しやすいのか?
高齢者に多い合併症と症状はどうなのかについて確認しましょう。
ご自分がハイリスク群になるのか、合併症の症状に当てはまるのかを確認しましょう。
合併症を起こしやすい方
【ハイリスクとなる方】
・5歳未満の乳幼児(特に2歳未満の場合にはリスクが高い)
・65歳以上の高齢者
・妊婦
・免疫抑制状態にあるもの(HIV感染症を含む)
・19歳未満で長期アスピリン治療をうけているもの
・介護施設、慢性期療養施設に入所しているもの
・以下の基礎疾患をもつもの
◦慢性呼吸器疾患(喘息を含む)
◦心血管系疾患(高血圧は含まない)
◦腎疾患
◦肝疾患
◦血液疾患(鎌状赤血球症を含む)
◦神経・神経筋・代謝性疾患(糖尿病)
ただし、同じハイリスク群でも、
個々の状態によりハイリスク群とならない方もいます。
合併症の種類
ここでは、高齢者の合併症として起こりやすいものをあげました。
インフルエンザウイルスが直接原因となるもの(罹患する方は少ない)
・肺炎:肺全体が感染している
現在のインフルエンザの症状がひどくなります。
痰は、透明~白色です。
咳のしすぎで、少量の血液が混ざっていることもあります。
また、呼吸困難や胸痛といった症状も出てくることがあります。
原疾患のインフルエンザが治りきらない(症状がある)うちに、
罹患してしまう(症状が出てくる)ことがほとんどです。
・気管支炎:肺の手前の気管支が感染している
症状は、上記肺炎とほぼ同様です。
胸痛などの症状を訴える方はまれです。
・心筋炎:インフルエンザ関連としては少数ですが、、
心筋炎の中ではインフルエンザウイルスによる罹患率は高いです。
インフルエンザの発症後4-7日後に発症することが多いです。
心不全症状(呼吸困難、動悸、易疲労性、体重増加、尿量減少など)
心膜炎による胸痛、不整脈(脈が飛ぶ、乱れる)が代表的な症状です。
重症例ではショック状態(血圧低下し、生命に危険な状態)となる場合もあります。
細菌の二次感染によるもの
(インフルエンザ感染により、免疫力が低下して違う細菌に感染する)
・肺炎
インフルエンザが治りきらないうちに罹患する場合と、
一旦収まってから罹患する場合があります。
現在のインフルエンザ症状がひどくなったり、
一旦完治したようにみえて、ぶりかえしたようになる場合があります。
痰は、黄色や緑色となります。
咳のしすぎで、粘膜が切れて少量の血液が混ざっていることもあります。
肺炎球菌によるものが多いです。
・気管支炎
症状は、上記肺炎とほぼ同様です。
胸痛などの症状はまれです。
・持病の呼吸器疾患の悪化
持病の持つ症状の悪化
インフルエンザにより食事・水分が摂取できずになる病態
脱水
脱水とは、体内の水分と電解質(ナトリウムやカリウムなど)が、
下痢や嘔吐、汗などにより、失われている状態です。
重症化すると、意識障害やけいれんなども起こします。
また、脳梗塞や心筋梗塞を起こしてしまうこともあります。
水分の補給だけでは、改善されません。
経口補水液で、失われた電解質を身体に取り込む必要がありますが、
ひどくなった状態だと口から食物や水分を摂っても、
身体が吸収しにくくなっています。病院での点滴加療が必要となります。
症状
・皮膚や口唇、舌、口腔内の乾燥、つばが少ない・口がねばつく
・皮膚に張りがない
・微熱、食欲低下、易疲労感、
・尿量が減っている(尿の色が濃い)
・体重減少
・脱力、立ちくらみ、意識障害、血圧低下、頻脈(脈が通常より早い)
・元気がない、ぐったりして反応が鈍い
インフルエンザが長引いたり、症状が強い時の受診するタイミング
緊急で受診が必要な場合
•呼吸困難
•青くなった顔色、青紫の唇
•胸の痛み
•激しい、持続性の嘔吐(水分補給が出来ない)
•胸部や腹部の痛みや圧迫感
•突然のめまい(続かなければ翌日まで経過観察で良い)
•意識混濁・ぐったりして反応が鈍い・けいれん
早めに受診が必要(その日に受診か遅くても翌日)な場合
•インフルエンザ様症状改善後の再発熱や咳の悪化
•色のついた痰が出る
•安静時、活動中の息切れ
•インフルエンザ症状がどんどんひどくなる場合
•A型インフルエンザでは10日、B型では14日以上症状が長引く場合
(長引いている場合でも、症状が徐々に軽減していれば、
自宅療養でも問題ないと思いますが、ご心配であれば、
一度受診された方が良いでしょう)
•心不全症状(体動時の呼吸困難・動悸、易疲労性、体重増加、尿量減少など)
•不整脈(脈が飛ぶ、乱れる)
•皮膚や口唇、舌、口腔内の乾燥、つばが少ない・口がねばつく
•持病の悪化
注意
他にも、インフルエンザ関連による合併症はあります。
ここでは、罹患率が高いものをあげさせていただきました。
インフルエンザウイルスによるものや常在菌によるものなど、
身体中どこにでも二次感染の可能性はあります。
インフルエンザ罹患後に、上記以外でも、
何か身体に異常がある場合などは受診することをお勧めします。
まとめ
今回は、インフルエンザの合併症と受診目安についてまとめました。
高齢になると、身体の反応が鈍くなり、症状が出ずらくなります。
気づいた時には重症化している例も多々あります。
ちょっとの変化にも注意していくことが重要となります。
「この位大丈夫」と、思わずに、
「ちょっとの事が命取りになる」と、やや大袈裟位に思う位で
対処した方が安全と言えるでしょう。
また、インフルエンザになった時に、
肺炎球菌ワクチンの接種をしていない場合は、
医師と相談してワクチン接種をすることも肺炎予防となります。